なぜ大手企業の新規事業はうまく立ち上がらないのか?
2016年も残すところあと僅かなので、またもやブッコミ系のネタを書いてみようと思います、切り込み副隊長くらいになりたいINST石野です。
新規事業立ち上げ!
というワードに世の中が踊らされ過ぎだと常々感じております。幸いなことに、スタートアップ界隈が盛り上がっているのはとてもいいところなのですが、反対に大手企業の新規事業は、創業2年目のヘボ社長の私に言われる筋合いはないかもしれませんが、ほとんどイケてないし、うまく立ち上がっていないと思います。
それはなぜか、というのを考えてみます。本日のブログもやや毒素含有量が多めです。
節子、それ新規事業ちゃう、ただの横展開や
世の中でいう、新規事業の6-70%はこれじゃないかなと。
例えば、人材紹介会社が「30代キャリア女性に特化した事業を開始」とかいうやーつー。ぶっちゃけこれはまったくもって新規事業ではありません。ただの横展開ざんす。だってやってることが既存事業と全く一緒で、ただインダストリで切っただけでしょ?
これで新規事業の立ち上げ経験がありますとか、面接でドヤ顔してくるやついるから本当にタチが悪いです。
まあ、部署立ち上げや支店立ち上げとかと同じく、なにもないところからスタートをした経験はあったとしても、成功のための指標や、会社の後ろ盾もあるわけですから、立ち上がらなかったらそれはそれで恥ずかしいですよね。
なので、世の中で言われる新規事業の6-70%は、そもそも新規事業ではないと。ただの横展開。
大手がスタートアップの上っ面だけパクって中身がない
次はコレ。世の中のイノベーションというのは、常にスタートアップから生まれ、大手企業からはイノベーションは生まれないというのが僕の持論です。生まれてるっぽく見えてしまうのは、そう見せているから、というだけ。
以前のブログに儲かるからやる、は善か悪かという主旨の記事を書きましたが、世の中を変えようと、スタートアップがヒーヒー言いながら立ち上げた事業である程度マーケット規模や成長性が見えると「よし、いっちょそれウチでもパクってやってみっか」というやつ。
まあ確かに新規事業かもしれませんが、極めて正義が薄いです。大手を始めとした競合プレイヤーの参入により、サービスレベルが向上して、価格が安定化する、というのは良いかもしれませんが、大したノウハウがないやつらが詭弁で上っ面だけパクって、業界全体の評判を落としてしまう可能性があるのがダメなところです。
これは某大手インテリジェンス様が立ち上げられたeiiconというオープンイノベーションプラットフォームという、まあわかりやすく言うとcrewwのパクリサービスです。
crewwはサービス立ち上げ時から知っていますし、どんな苦労があったとかが本当によく知っています。
大手がスタートアップのビジネスを本気も出さずにパクって新規事業はじめました、的な美談を展開しているのがかなり腹立たしく思っている次第です。大手資本で駆逐すりゃあいんだろ、みたいな。
先日はnewspicksとタイアップしてホリエモンに「このサービス本当に必要なの?」的な記事広告を出稿してましたが、断言できるのが、このサービスは必要ないサービスであるということです。
eiiconのダメなところをぶった切ってみる
まあ、たまたま目についただけなのですが、これがいかにダメなサービスなのかを切り込み隊長よろしくぶった切ってみたいと思います。
・P&Gがあたかも自社の事例であるかの様にデカデカと掲載されている
まずびっくりするのがコレ。誰もが知っているであろうP&G社の事例が載っていますが、これは別にeiiconの事例でも何でもないということです。厚顔無恥と言いますか、よくもまあこんなことが出来たなあと。対外的な情報とはいえ、P&G社には許可を得ているのでしょうか。「へー、P&Gが参画してるんだー」と思わせようと、壮大な釣り針を仕掛けているのでしょうか。
・twitterもFacebookもまるでやる気がない
Facebookのいいね!が500ちょっと。twitterに至ってはフォロワーが30ちょいと散々たるソーシャルメディアマーケティングです。グループに何千人社員いるの?賑やかしでもいいからもうちょっと関係者にフォローさせたりいいね!させたりしたらどうでしょう。それぞれのポストにふぁぼもいいね!もほとんどついてなさそうです。ただやってるだけの典型。
・いつまで準備中なのかわからない→このままクローズ?
どうやら、このサービスはあくまでまだ準備中ということですが、いつまで準備中なのでしょうか。9月からサービスを運営?準備?し始めたようですが、3ヶ月経ってもオープンイノベーションが起きていない。
crewwみたいに案件を獲得しようと思って立ち上げたものの、思うように案件が獲得できていないのでしょうか。極めて残念です。乾坤一擲のnewspicksのステマ記事でも「このままクローズするんじゃねえの」とか「読んでわかったけど、本当に必要ないサービスということがよくわかった」とかコメントされてましたしね。
そもそも大手企業の新規事業は「パフォーマンス」であることが多い
とまあ、けちょんけちょんに書いてみたわけですが、ここからはeiiconに限らず、僕が大手企業の新規事業を見てきて、自分なりに「あーこれはうまくいかないな」と思う理由を書いてみます。
・そもそも本気で立ち上げる気がない
先程のeiiconの事例を見てもわかるように、本気で立ち上げようとしていないことがわかります。これで本気だよ!という反論があるのであれば、断言しよう、このサービスは100%立ち上がりません。リソースがないとか、予算がないとかそういうレベルではなく、金もかけずに出来るソーシャルへのポストだったり、フォロワー獲得の施策すらやってないようでは、本気度がたかが知れます。
・ただの意識高い系事業責任者とスタートアップ経営者を一緒にするな
本気で立ち上げない理由は、本気で立ち上げなくても良いからです。事業責任者とはいえ、別になんのリスクを取っているわけでもなく、今まで通りの給与をもらいながらのほほんと「私、新規事業責任者 ☆ミ キラキラ」とやっているんでしょう。社内スタートアップとかいう間抜けなセリフを吐いている人もいましたが、自分の身銭切ったり、必死に調達して事業をやっているスタートアップ経営者と、その辺の頭の中がお花畑で、固定給もらいながら事業立ち上げ?とかやってる意識高い系新規事業責任者を一緒にしてもらっては困ります。
もし、自分が人生を賭してでも立ち上げたい事業なのであれば、サラリーマン人生をそこで中断して、後ろ盾がなにもなくなったとしてもその事業を立ち上げたいと思うか?もしNoなのであれば、その事業は立ち上がらないということじゃないかなと。
・社内人材の流出を食い止めるための新規事業
「新規事業立ち上げ」というと、事業立ち上げ意欲が高い人達が集まったり、社内での異動先として魅力的に映ることもあるでしょう。でもね、それってただのパフォーマンスですから。意識高い系社員を辞めさせないようにするための見せかけの新規事業だから。
・大手企業内の「優秀層」は「オペレーションが上手い人」でクリエイティビティがない
大手企業で仕事ができる人が、事業立ち上げができる人である可能性は極めて低いと思います。組織の中で成果を出すということと、0→1で事業を作るときに必要な能力は全く異なります。ちなみに大手企業に長くいればいるほど、自分の業務が細分化された狭い範囲になりますし、マネジメントという能力は身についたとしても、自分一人でゴリゴリ何かをすすめていく、という能力は身につかないですよ。身につけられてない人に任せても実際立ち上がらないですからね。
もし、私がeiiconの事業責任者だったら
では、少しヒントではないですが、もし僕がこの事業の責任者だったらどうするかを書いてみようと思います。
・会社間の連携・コラボはcrewwに任せる
もうですね、今更crewwを抜こうとかは無理だと思うんですよ。オープンイノベーションを仕掛けていくべき!と3-4年事業をやっている彼らに、「人材の採用ニーズありませんか?」しか聞いたことが無いインテリジェンスがこの領域で勝てるとは思えません。そもそも、「御社はこの企業と組んで新規事業をやるべきです!」と言い切れるインテリジェンスの営業マンがどのくらいいるのでしょうか?もし仮に言えたとしても「うん、そうだね。つーか、早くオーダー出してるんだから推薦してきてよ」となるのが目に見えてるわけで。
・新規事業立ち上げ専門の人材ビジネスっぽくしてみたら?
企業のデータベースが数万社あるのはわかりました。ですが、もうちょっと本業に寄せていくために「新規事業立ち上げの責任者求人」を集めるような施策を打ってはいかがでしょう。
例えば「新規事業立ち上げをしたい」という意向で転職相談に来た人には別途NDAでも締結させて、インテリジェンスの取引先に新規事業のプレゼンをできるような機会を設けるとか。で、もしそのプレゼンが採用されたら、インテリジェンスの社員になって、派遣とか業務委託契約でその企業に責任者として出向扱いにして事業立ち上げをするんです。1年間の期間限定とかにして、立ち上がれば紹介予定派遣みたいに入社してもいいし、立ち上がらなければやめればいいだけ。
紹介手数料はもちろん無料。そのサービスのレベニューの数%を1年間もらう、というような料金体系にしてみたら、新しい風を吹き込みたい企業も、新規事業をやりたい個人も、インテリジェンスもwin-win-winになると思うんだけどなあ。
これであれば、なあなあに事業立ち上げをやる責任者もいなくなりますし、転職を切り口にイノベーションを起こせるような気がします。企業の強みを活かしつつ、やっていく新規事業なのであれば、こんな感じですといかがでしょうか。
それでは。
Kosuke