Yahooとインテリジェンスの事案に見る「良い人事制度と組織フェーズ」についての考察

終電間際に駅の改札近辺で熱い抱擁と接吻を交わすカップルはブサイクが多い説を主張する、INST石野です。

昨日のブログで「コンサルティング」をdisってはおりますが、2006-2011年は人事コンサルティングをメイン事業にしている会社に在籍をしておりました。僕は採用支援系のしごとがメインだったのですが、一応制度の設計などについても触りの部分くらいはある程度理解をしております。

先日、気になるニュースが1件と気になるブログ記事が1件ありましたので、今日はそれを題材に「良い人事制度と組織フェーズ」について、皆さんお待ちかねの毒を交えながら考察してまいりたいと思います。

気になるニュースはこちら

ヤフー、週休3日制を検討 数年内の実現めざす

「週休3日」という言葉だけが独り歩きして「え?まじ!?俺もヤフー行きてえwww」みたいな感じになっておりますが、新幹線通勤・自転車通勤の解禁の他、リモートワークの日数を増やすなど、多様な働き方に対応出来るようにどんどん制度を変えていくとのこと。本当に素晴らしい取り組みと思います。

 

世の中の最先端トレンドは「多様な働き方の許容」で間違いない

ここ数年、急激に進む「多様な働き方の許容」これは間違いなく時代のトレンドと言って差し障りないでしょう。インターネットの普及や、様々なツールの発展・発達により、特に「オフィスに出社すること」が大事ではなくなってきたような気がします。

リクルートさんやその他大手の企業でもリモートワークを導入したりしておりますし、経営者仲間のキャスター中川さんの会社ではリモートワーカーの活用をメインビジネスにしております。ご多聞に漏れずINSTでもリモートワークを推奨しており、クラウドサービスやコミュニケーションツールをフル活用しておりますが、今の規模感であればメリットこそあれ、特段大きな問題は発生していない状況です。シニア人材や、フリーランスエンジニアの活用に関してもかなりマーケットが順応してきたのではないでしょうか。

 

それに伴い「会社が求める人物像」が変わり、制度も変わっていく

「多様な働き方の許容」の1番のハードルは「サボりそうなやつ対策」でしょう。

まあ、そんなやつ雇わなければ良いんだよ、という意見もあると思いますが、2:6:2の法則というのがある通り、どうしても組織にはサボるやつは出てくるわけです。リモートワークに限って議論をしますと、「会社に来ない人達がなにしてるかわかんない」というのが1番頭を悩ませる事でしょう。

別にフルコミの営業とかであれば成果に対してだけ報酬を払えばいいのですが、社員となると固定給を支払う義務が生じますので、なかなか導入に至らないケースも有るようです。また、せっかく多様な働き方を許容したのに「社員にサボらせない」ために人事制度や就業規則で雁字搦めにして、それじゃあリモートワークの意味ないじゃんみたいなことにもなりかねません。

会社にちゃんと出社してきて、マネージャーが管理していさえすればハイパフォーマンスを出していた人が、リモートワークになった途端に羽が生えたように自由に行動して全然仕事しなくなる、ということも全然有りえますし、逆に自己管理がしっかり出来る一般的な能力値の社員が、リモートワークの導入によりモチベーションが上がりハイパフォーマーになることも考えられます。

 

良い人事制度がある会社は「会社にとって」優秀な人が残り、そうでない人が気持ちよく退職する

これは、僕の前々職でお世話になっていた、元日本オラクルの常務取締役人事本部長であった秋田さんの言葉です。

会社組織は生き物であり、様々な人材が集合した「究極のナマモノ」です。そのナマモノにとっての「良い人事制度」とは何かを考えますと、どの会社にも須らく当てはまる「黄金の人事制度」のようなものが存在しづらいのが理解いただけると思います。

良い人事制度とは、その会社にとって優秀な人のロイヤリティが高まり、そうでない人が自然と退職していく、そういった言い回しになるのはそのためです。

つまりは言い換えますと「人事制度が変わったタイミング」は会社が求める人物像が変化してきたタイミングだと言うことになります。

 

人事制度の変更によって居心地が悪くなったら、それはきっと辞めどきの合図

こんなブログを書いている人がいました。

工夫して生産性を高めたら、給料が下がった話

どうやらこの人は僕も在籍していたインテリジェンスの現役社員の方のようです。

彼の意見をまとめますと

・人事制度が変わってみなし残業制から残業時間分の残業代が全支給されるようになった
・結果として自分の給与が下がった(フィリピンパブ5回分ってことは3万円くらい?)
・残業をせずにパフォーマンスを出している自分の給与が下がって、残業をしまくっている人の給与が上がるのが不満
・中長期的には残業をしない人が評価されてベース給が上がると思うが、短期的な給与格差に納得できない

こんな感じでしょうか。まあ言っていることはごもっともと思います。基本的に僕も残業するより定時で上がったほうが偉いと思いますよ。

ですが、インテリジェンスの企業文化や人材ビジネスの商習慣を考えますと、まだまだ「長時間労働の美学」が根強く残っているものと思われます。僕が在籍していた11年ほど前は「長時間働けるやつが偉い」というのは全社員が理解していたのではないかと思います。始発で来て終電で帰る名物男みたいな人いましたし。

インテリジェンス残業代支給に関する決断は、残念ながらブログの彼のような人材にとっては「もう辞めてもいいよ」という通告と受け取って問題ないと思います。数千人が在籍する組織の中で、こういった不満意見を持った反乱分子が出てくることなどは100%想定の範囲内です。その上でのジャッジなわけですから「合わない人は辞めてくれて結構」という会社の意思表示と受け取り、不満をタラタラ垂れるよりはさっさと転職活動を開始したほうが良いでしょう。

もう会社組織はあなたのことを求めていないのです。

 

コンプライアンス(冷静)とベンチャースピリッツ(情熱)の間

また、これは1年3ヶ月しか在籍していなかったOBの一人として言わせていただきますと、彼のようなマインドの人材はインテリジェンス社内では出世できないと思います。おそらく今も昔もインテリジェンスで出世できる「インテリジェンスにとっての優秀な人材」は

定時で自分の仕事を片付けるのは当たり前で、その後に自分で仕事を創り出し「残業分は無給でもいい」と会社のためにモーレツになって働ける人

ではないかと。

会社としてコンプライアンス問題もありますので、コレを上司が強要することは出来ませんし、したら問題だと思います。ですが、少なからず、こういった狂信的とも思える人材の存在がインテリジェンスの強みであると私は思っています。

「仕事の報酬は仕事」というのは今では古い考え方なのかもしれませんが、自分が雇用される側から雇用する側になってみてすごく思います。もちろん労働関係の法令は守るべきですし、従業員には当然主張する権利がありますから、僕も当然ながら従業員に過重労働は強要しませんし、今後するつもりもありません。ただ、同じ人件費を払うときにどっちの人に気持ちよく払えるか?を経営者視点で考えると・・・(まあ経営者視点持つのは経営者にならないと無理って言っておいてアレですけどw)

営業から制作部門に回って、「俺は顧客から指名で仕事もらえるし、普通のやつの倍は仕事して定時に帰ってるぜ、ドヤ」と主張するのも結構ですが、そのノウハウを共有し、周囲を育てることで組織全体のパフォーマンスUPが考えられるようになると、彼ももう1ランク上の評価が得られるようになると思うんですけどね。

 

それでは。

Kosuke