資金調達を軽々しく「おめでとう」と言うのはもうやめようという話

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ということで、相変わらずウォーキング・デッドにハマっているINST石野です。今シーズン6の11話。もうウォーカーが風景に見えてきました。

さて、今日はスタートアップな皆様が一度は絶対に考える「資金調達」について。雪道通勤のお供にどうぞ。お気に召したらぜひシェアしてみてくださいね。
※冒頭の画像にはちゃんと意味があります。

 

「資金調達おめでとう」シェアに警鐘を鳴らしたい

前提として僕が経営するINSTは資金調達を行っていない。融資は受けたけれども、自己資金だけで一応ここまでなんとかやってこられている。そして、余程のことが起きない限り、「融資」をしてもらうことはあっても「投資」を受ける気は全くない。それはなぜかというのを今日は説明すると同時に「資金調達おめでとう」に警鐘を鳴らしたい。

※なので、資金調達を経験した経営者の方も、「おめでとうシェアしたことあるわー」という人も、所詮、資金調達童貞のペーペー経営者の戯言だと思って聞き流してもらって構わない。

「◯◯社が△△から〜〜円の資金調達」などというニュースはよく目にすることと思う。そして、そのニュース記事に経営陣やその会社に在籍する友人をタグ付けして「□□さん、資金調達おめでとうございます!」とシェアするのも同様に日常的にfacebookのウォールに出てくる。

会社経営を自分でしていなかったり、財務担当の責任者でなかったりしない限り、「資金調達」をするという経験をせずにビジネスマン人生を終える人がほとんどだと思う。

だが、本当に資金調達はおめでたいことなのだろうか?

 

「資金調達=ただお金をGETした」ということではない

「◯億円の資金を調達した」というと、一般ピーポーの人は「いいなー、そんなにお金もらえてすごいよなー」という感想を単純に持つと思う。実際僕も経営者になって少し経つまではそう思っていた。

ただ、資金調達を成功させた、ということは「なにもせずにお金をGETしました」ということではない。

すごく簡単に言うと、資金調達するということは、会社のオーナーシップを誰かに切り売りし、その見返りとしてお金を得るということだ。

会社=1人の人間、として例えると、資金調達とは、自分の右腕を切り落として、3億円で誰かに買ってもらうようなものだ。社長の右腕、とか言う意味ではなく、物理的な右腕だ。ほら、その右肩から生えてて、先には5本の指が生えてる、その右腕。それを根本から切り離して3億円で買ってもらう、それが会社にとっての資金調達なのだ。

 

あなたは自分の右腕を切り落として3億円で売った友人に「おめでとう」と言えるか?

あなたは自分の右腕を3億円で切り落として誰かに売れるか?僕は絶対に無理だ。30億積まれてもイヤだ。

まず、超痛そう。そして、自由がなくなるし、すごく不便だ。大好きな野球もできなくなるし、2人いる子供を同時に抱っこ出来なくなってしまう。(ウォーカーに噛まれたのであれば別なんだけど)

そして、もしあなたの身の回りに、そういった苦渋の決断と痛い思いをして多額のお金を得た人がいたとして、その人に「右腕3億円で売れたんだってね!おめでとう!」と言えるか?僕は言えない。

僕の個人的な意見だが、資金調達おめでとう、というのはそのくらい無神経なことなのではないかと思う。

 

なぜ経営者は右腕を切り落としてまで資金調達をするのか?

では、なぜそんなにも苦しそうな思いをして、資金調達をする経営者がいるのか?それは、「コトを成したい」からだ。

厳密には「コトを成すために不自然な成長」が必要だから、経営者は資金調達という悪魔の取引をする。

命を賭してでも、やり遂げたいことがある。社会に提供したい価値がある。だが、自分の手持ちの金だけでは、その壮大な夢を追うことは難しい。なので、投資家に「今あなたに提供できるのは会社のオーナーシップしかありません。これを◯◯円で買ってくれませんか?」とやるのが資金調達なのだ。

もちろん大手との業務提携(いわゆるアライアンス目的)で行う資金調達や、知名度・信頼度のUPのために行う資金調達もあると思うが、VCとの取引はほぼ悪魔の取引だと思っている。※VCの人、ごめんなさい。

いくら大事な仲間だとしても数年間自分の夢に無給でついてきてはくれないだろうし、AWSの料金は「出世払い」のツケは効かない。なにをするにも金が必要なのだ。人を雇うにも、サービスを使うにも、家族にご飯を食べさせるのも。

なので、自分の右腕を切り落とすようなことをしてまで、「コトを成す」ために資金調達をするのだ。そしてその右腕を1番高く買ってくれる悪魔を探して取引をするわけだ。

ちなみに、切り落とした右腕はその後買い取って結合手術をすることも不可能ではない。大抵は自分が売ったときより高い価格で買い戻すことになるし、手術後もなんらかの違和感は残るのではないかと思う。未経験なのでわからないけど。

なんどもなんども資金調達をして、経営陣の持株比率が低い、ということは、右腕だけでなく、左腕、両足も切り落としているというと同義だ。もしかしたら溶液で満たされたガラス容器の中に首から上だけプカプカ漂っている状態になっているかもしれない。(総督の部屋のようにね)

 

資金調達に憧れる駆け出し経営者あるある

創業して半年もすると、以前のブログにも書いたように経営者の知人が増えて、Facebookで「資金調達いたしました!これからがんばります!」と、知人経営者がシェアするのを目にするようになった、なんとなく「スタートアップは資金調達してなんぼなんだな」と思っていたことがあった。ちょうど時を同じくして、どうやってこんな小さい会社を見つけてきたのか、数社のVCから問合せがあったりして、なんだか嬉しくてその担当者に会ったりもしていた。

で、某知人経営者(経営者としても年齢も先輩)に「資金調達をするべきか否か」ということを神保町のシブい喫茶店で相談させてもらったことがあった。その知人経営者は「資金調達はしなくていいなら絶対にしないほうがいい」と教えてくれた。その時にその人に説明してもらったことが今日のブログの大体の骨子だ。「不自然な成長」というのはその時の彼の言葉だ。

・存在しないマーケットを切り開いていくためにマーケティングの予算がいる
・もたもたしていると競合に追いつかれたり、大手資本が参入してきて淘汰されるので成長スピードを上げるために社員数が必要

などが、不自然な成長というわけだ。

今思えば、その時その彼に相談していたことは本当に正解だったなと思っている。Hさん、本当にありがとうございました。

そして幸いなことに僕は資金調達をせずに、会社をある程度軌道に載せることが出来た。僕は「不自然な成長」ではなく「身の丈にあった成長」を選択したわけだ。

夢がないな、しょぼいな、と思われるかもしれないが、IPOしたいとか、売上数十億みたいな会社を作りたいとは正直思っていない。人もなるべく雇いたくないと思っている。※このブログ記事参照

「ITの恩恵」を最大限に受け、レバレッジを最大限に効かせて、しなやかで柔軟で従業員が本当に働きやすく、少人数だけれどもたくさんの顧客に価値を提供できる会社にしたいと思っている。

 

資金調達には「おめでとう」じゃなくて「頑張れ!」を送ろう

終盤に差し掛かってきたが、弁明をすると資金調達をした経営者の人や、VCの人をdisる気は全くない。

僕は会社の不自然な成長よりも、自分の自由を優先したしょぼい経営者なのかもしれない。自分に出来ないことをやった彼らのことは本当に尊敬する。

それだけ大きな勝負に打って出る、という意思決定をしたということと、市場から評価されて資金を得られたということは本当に素晴らしいことだと思う。「不自然な成長」を成し遂げるために成功するかどうかわからない事業計画に金を出すVCの人達もすごいと思う。誰かの馬鹿げた夢は、何かを変え、日本を変え、世界を変え、世界を変えるのだから。

だからこそ、資金調達のニュースには「おめでとう」と言うのではなく、「頑張れ!」を送ったほうが良いのではないか、と思っている。右腕切り落として、その傷がズキズキしているのは経営者は読んで字のごとく「痛感」しているわけで、血に塗れた左腕で3億円を握りしめているのだ。

ちなみに、IPOに関しても同様におめでとうはあんまり言いたくない。切り落とした右腕を、肉を売るには最高の環境のスーパーマーケットの店頭に並べて細切れにして再生不能とも言えるような細切れにして一般人に切り売りするというのがIPOに近いと思っているからだ。だから店頭公開って言うのだなと。

IPOで経営者や株主がたくさんのお金や社会的信頼を得るのは素晴らしいことなのだけれども、資本主義の世の中でこういった苦渋の決断や背景があるということは、少しだけでも良いので覚えておいてもらいたい。

本ブログ記事がグロテスクで過激で極端な表現であったこと、また、何らかの事故などで身体の一部を欠損されてしまった方などに対しては極めて不快で失礼な表現であったことをお詫び申し上げます。

それでは。

Kosuke

 

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INSTは身の丈経営ですが、良いサービスは作っていると思います(笑)

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