破天荒フェニックスに見る企業広報戦略
INST石野です。
今とても話題になっている破天荒フェニックスという本をご存知でしょうか?
大手メガネチェーンのOWNDAYSの再建をリアルに描いたビジネス小説として経営者界隈から火が付き、大ヒットしているようです。
※Amazonでも在庫切れになっていたりするようですね。凄い。
内容としては民事再生寸前で投資会社からも見放され買い手がつかなかったOWNDAYSを若い社長が自己資金で大多数の会社株を取得し、仲間はCFO1人という状況から再生し海外展開をし、企業がどんどん成長していく様が非常に生々しく忠実に描かれています。※一応フィクションではあるということですがw
社長の田中さんは本のタイトルどおり、めちゃくちゃ破天荒でキャッシュフローも安定せずに月末の支払いが危ないような状況で新店舗をオープンしたり海外進出をどんどん進めていったり毎月の資金繰りがめちゃくちゃ大変そうでCFOの奥野さんの気苦労がとても良くわかったりと、経営者であれば一度は経験したことがあるようなキリキリ胃が痛むような思いを思い出したり、会社が成長していく喜びを自分の会社に重ねてみたり、社内での軋轢にどう立ち向かっていくかを勉強したりと、非常に共感出来る部分も多く、圧倒的なスピード感で読み終えてしまうような非常に面白い本でした。
書評は様々な方がたくさん書いていますが、僕は視点を変えて、この「破天荒フェニックス」は企業広報として非常に新しくそして効果的な方法だったなと思い、その視点で今回のブログを書いてみることにします。
noteの人気連載から出版へ
この破天荒フェニックスはピースオブケイクさんが運営するnoteというコンテンツ配信プラットフォームでの人気の連載から出版されたデジタル起点のコンテンツです。
ピースオブケイクの代表の加藤さんは、あの有名な「もしドラ」の編集を担当し、独立したというスタートアップ界では異色の経歴の持ち主ですが、「クリエイターが活躍できる市場をネット上につくります。」というスローガンのもと、noteを大ヒットさせています。
この破天荒フェニックスはネットから火が付き、ホリエモンもnoteを一瞬で読み終えたとか。
そしてnoteは出版社との提携を発表しており、秀逸なコンテンツや優秀なクリエイターの出版もサポートしています。
ピースオブケイクが出版社とパブリッシング・パートナーシップを締結
破天荒フェニックスの出版、そして大ヒットはnoteとSNSをヒットのプラットフォームとして活用したOWNSDAYSの秀逸な企業広報活動と言って良いのではないかと思います。
消費者に刺さる、求職者に刺さる、経営者に刺さる
僕は裸眼で視力1.2ずつなので、メガネをつける習慣がありませんでしたが、この本を読む前のOWNDAYSの印象はJINSやZoffよりちょっと高くて少し規模の小さいメガネチェーン店、という程度でした。
ですが、この本を読んでからは「メガネ掛けないけど、OWNDAYSでメガネ買ってみたい」と思ってしまっています。店舗づくりに掛ける想い、会社再建に掛ける想い、そのストーリーを背負った製品を買ってみたい、と思わせる力がこの本にはありました。Twitterで検索しても僕のように心境が変化した方がたくさんいるように思います。これはコモディティ化されがちで差別化が難しい「メガネ」という製品の大きな差別化になっています。まず消費者に刺さってます。
次に、求職者にも刺さるでしょう。この本を読めばあたかもどん底からOWNDAYSを再建させた社長の傍らで、その飛躍の瞬間瞬間を疑似体験したような気分になります。社長の想いに共感する人も多いでしょうから、この本を読んだ人が転職を考えていた場合は大変大きなアドバンテージになります。
また、前述したように共感できる部分が多く経営者にも刺さります。事実僕も別にOWNDAYSさんからなにかもらったりしているわけではありませんが、Tweetしたりこうしてブログを書いて無料で宣伝しています(笑)経営者には発信チャネルとしての力が強い人もいるわけで、これは絶大な宣伝効果ではと。
十人十色の起業ストーリーをもっとみんな書いてみよう
起業ストーリーは書籍の中でも人気ですよね。が、多くの経営者は「そんなもん書いても別に誰も読んでくれんだろう」と書くことすらしていないと思います。
僕も書いてないのであまり人のことは言えませんが、まずnoteや自社ブログにでも書いてみることで「え、あの会社そうだったんだ」とか「わかるわかる」という反応を得ることも出来ると思いますし、それを読んで応募してくれた人は入社後のギャップを感じづらいという効果もあるかと思います。
古くはAmebaで藤田社長が書いた「渋谷で働く社長の告白」がベンチャー起業・転職のバイブル的な人気を誇りましたが、もしあのコンテンツが今ブログ起点でスタートし出版、となっていたらというのが今回の破天荒フェニックスではないかと。SNSが浸透し、個がコンテンツシェアの起点となっていますので藤田さんの当時より多くの人にリーチ出来るようになっていますしね。
起業ストーリーとして外部に情報をさらけ出すのはとても勇気がいることではありますが、そのさらけ出された情報が生々しければ生々しいほど、今の時代は共感し、シェアし、ファンが増えていくのではと思います。
SNSやブログが苦手、という経営者も多いかもしれませんが、有名でなくてもSNSの中で局地戦の展開は簡単にできますし、これからの企業広報としてSNS・ブログを活用しない手はないかと思います。まずはぜひやってみることから始めてみましょう。
まとまりませんが、この辺で。
Kosuke