パソナの本社淡路島移転の狙いはなにか?大手企業本社の地方移転は進むか?を考える
千葉でSMS配信のSaaS屋をやってます、inst石野です。
石原ではありませんので、念の為。
先日発表されたこんなニュースが話題になりました。
パソナ、本社機能を淡路島に移転 社員1000人を異動 取引先とオンラインでやりとり
新型コロナウイルスによってワークスタイルの変革が余儀なくされたわけですが、東京大手町に本社を構え、社員数千人規模の大手人材会社が淡路島に本社機能を移転というのはなかなかセンセーショナルです。
かく言う僕も2017年10月に東京神田から千葉市中央区に本社移転を経験した事がある経営者なわけですが、規模感や思惑が色々異なりますので今日は文章にまとめながらパソナの淡路島移転の本当の狙いとは?というのを考察していきたいと思います。
ちなみに僕が本社移転のときに書いたブログがこちら。
ソフトバンク孫さん、H.I.S.澤田さんと並んでベンチャー三銃士と称されたパソナの南部代表の生まれが兵庫県です。一代であれだけの規模感の会社を作り、人材派遣という働き方を世に広く定着させた一流の経営者といって間違いはないでしょう。
その南部代表は、コロナ禍での感染防止のために淡路島でお仕事をされていたようです。おおよそ感染拡大してリモートワークが主体になってきてから半年くらいですから、気付いちゃったんでしょうね。
「あれ、本社淡路島にすればいいんじゃね?」って。
単なるひらめき・思いつきなのか、深い裏の事情があるのかはわかりません。もしかしたら全部外れてるかもしれませんし、当たっているのかもしれません。一つの意見としてご覧になっていただければと思います。
賃料の削減→淡路島のオフィス賃料は首都圏の1/5!
これはオフィシャルに公表されています。賃料という固定費を抑えることができるというのは移転の大きな理由の一つとして考えて間違いはないでしょう。
数坪のオフィスを借りるのにも「都内って家賃高いなぁ」と僕も感じていましたので、都内の一等地に何千人も収容できるオフィスを借りられる財務状況の会社を作れるだけで尊敬します。
まあでもオフィスの賃料で削減できた経費は社員に還元するっておっしゃってますが、パソナさんの大手町オフィスの一階にある田んぼ。。。あれ無くしたら相当社員に還元できたんじゃない?って思うのは僕だけじゃないはずです。
淡路島だと賃料が安いのいいことになんかすごいオフィスにしそう。。。って思ってSNS見てたら
こんな施設(空中座禅道場)を建設する予定らしいです。こりゃあ社員に還元する気ホントにあるのか?って感じです。宿泊施設らしいのでパソナの本社に営業に来た人や、本社で会議があった時に社員に開放したりするのでしょうかね。いずれにせよ田んぼと同じく僕にはどうしても無駄に見えてしまいます。
移転拒否した人たちのリストラか?
ウケるな、新手のリストラ案。海外だと本社移転レイオフは時々見ます。日系大企業だと日本光電以来かな。
新型コロナ:パソナ、本社機能を淡路島に 東京集中の弊害回避: 日本経済新聞 https://t.co/nQFiZzxWba— 三上俊輔(Shunsuke Mikami) (@mikamika8375) August 31, 2020
ジーニアス三上さんもこうおっしゃってますが、本社移転によるリストラというのは少なからず狙いの一つでしょう。
本社で働くバックオフィスの方々は淡路島オフィスに移動ということですが、大手町から淡路島に転勤ね!と言われて「よっしゃー!淡路島!最高!」って即返答できるような人は殆どいないのではと思います。僕の思いつく限り離島に転勤と言われて喜びそうなのはBizerの畠山さんくらいではと思いますw
コロナ禍で企業の採用活動が鈍っている中、人材派遣・紹介で収益を出しているパソナも経営が苦しい状態にあるのは間違いありません。そこで本社移転でバックオフィスを中心に1200人を移動ということですから、、、中には都心への通勤のために近隣に住居を購入していたり、子供の学校や親族の関係など、または「ちょwww淡路島ってwwww」みたいな深い理由はないけどなんか嫌みたいな人もいるでしょうから、何人かは自発的に退職するでしょう。それを見込んでというのはあるでしょうね。
あと、また三上さんのTweetを使わせてもらいますが
まぁ、従業員の皆さんとしては、都心のど真ん中で稲を育てたり、牛飼ったりするくらいなら、淡路でやっといてくれた方が助かるっちゃ助かるんだろうな。
それにしても9,317名 (連結・契約社員含む)で、経営企画や人事などの本部機能の約1200人って多すぎだな。200人でいい。あ、、、そういうことか?— 三上俊輔(Shunsuke Mikami) (@mikamika8375) August 31, 2020
はい、連結9,000名で本部機能1,200名って多過ぎです。ドラクエだったら4人パーティーで僧侶が2人って感じです。
これは人材業界の闇でして、ほとんどの新卒を営業職で採用するのですが、出世や結婚などのライフイベントを経ても継続雇用していこうとするとバックかミドルオフィスに異動させるしか方法がなくなってしまうんですよね。特に女性管理職などは顕著です。時短とかで働かないといけないですしね。となると、ママ社員が淡路島に子供連れていけるか?と考えると。。。まあその後は察してくれって感じでしょうか。
DX(デジタルトランスフォーメーション)のため?
DXという文字を見るとどうしても超合金ロボとかそういうのを思い浮かべてしまうアラフォーなわけですが、パソナは淡路島に約5300平方メートルもの敷地面積を誇る「デジタル・トランスフォーメーションセンター」なるものを設置するようです。しかも大浴場、バーを備えた社宅(140室!)も。
・・・
全然DXしてないwww
高校大学の体育会系部活動や宗教チックなノリに近いように感じてしまうのは僕だけ?デジタルトランスフォーメーションされた会社というのは働く場所や時間等に縛られずITテクノロジーを駆使して効率的に働ける会社だと思っているのですが、僕の理解が間違っているのでしょうか。。。このご時世に社員用の大浴場とバーって。。。
そのバーと大浴場の施工費・運営費を社員に還元するという頭は働かなかったのでしょうか。
デジタルトランスフォーメーションを強烈に進めて一極集中を避けたいのであれば、まずは本社機能をリモートワークで機能するように仕組みを整えることが大事なのではと思います。ソフト面を中心にして。クラウドサービスを活用したり、電子契約を導入してハンコ文化をなくしたり、重役会議もZOOMでやればいいわけで。リモートワークの先駆者のキャスターさんは、取締役会も株主総会もリモートだそうですよ。ですからやってできないことはないわけです。
[追記]法人市民税が減税される
SNSでコメントいただいたのですが、淡路市のHPによると令和元年10月1日以降にスタートする期の法人市民税が大幅に減税されるようです。
9.7%→6.0%に。
現在パソナの本社がある東京都のHPを見ると
東京都も下がっていますが、16.3%→10.4%なので結構違いますよね。
SNSでは「竹中平蔵、タックスヘイブンに逃げるのか」みたいなコメントをしている人もいましたが、税金って事業主になって収める側になったら「マジでこんなに取られるの?」ってくらい持っていかれるので、移転によって税金が安くなるのであれば意思決定に影響する大きな要因になり得ます。
その他に考えられることは?
経営者の地元愛が強い
→ふるさと納税ではないですが、自分が生まれ育った場所に納税したいという気持ちはあるかもしれません
補助金・助成金などが出る
→各自治体は企業誘致に余念がないので安定的に利益を出している(?)大手企業を誘致するために助成金などの優遇が得られたのかもしれません
真新しさ狙い
→これはなさそうです。というかあったとしても合理性に掛けすぎていて「さすがパソナだね」というよりも「え?ちょっと何考えてるかわからない。。。」となってしまいイメージ的にはマイナスでしょう。
採用に有利
→淡路島は本州と四国から通勤できそうですので、もしかすると採用に有利?リストラして通勤ができる地元民を雇用するのであれば東京よりは安く雇用できそうです。が、実際どうでしょう??大手企業の本社機能ということになるとそれ相応のスキルは求められると思うので田舎のバイパス沿いにショッピングモールができるよ!となってバイト応募が殺到するような状況とは違うのかなと。
うーん、どれもあってそうだしどれも違うような気がします。
今後大手企業本社の地方移転は進むか?
パソナさんの本社淡路島移転の狙いについて考察してみましたが、皆さんの意見はいかがでしたでしょうか。もしかすると僕が知り得ないような暗黒の部分や天上界のようなレベルの話があるのかもしれません。ぜひ本当の狙いを中の人に聞いてみたいものですね。
ですが、今後大手企業本社の地方移転が進むか?というとそれはないなと改めて思いました。
・大手企業では最大公約数を取るのが難しい
→社員数が多ければ多いほど、多様な人材が働いていることでしょう。都内に通勤がマストの人、ご両親の介護などで引っ越せない人、週1六本木に飲みに行かないと死んでしまう人などなど。フルリモートでない限りは全員が満足納得する本社の地方移転はないでしょう。何割かの退職者を見込まないとならず、労使紛争などにも発展するリスクがありそうです。
・そもそも大手企業はリモートワーク前提でない
instが本社を神田から千葉に移したときは(今でもですが)人数が少人数でしたし、そもそもリモートワーク前提で採用・雇用・組織/仕組み作りをしていたのでオフィスはどこでも問題なかったのですが、大手企業の多くは会社に通勤してみんなで同じフロアで仕事をする前提で組織/仕組み作りをしているわけで、今になってやれリモートだ!在宅勤務もOKだけど通勤したい人がいると不公平じゃないかとか意味不明の議論をしているような状態ではそもそもリモートワークに対応するのなんか不可能だと思うわけです。
・大手企業ほど現状維持が好き
であれば、今のままで良くない?現状維持であれば文句言う人も少なそうだよね。。。というのが大手企業の意思決定になるでしょう。働き方改革の次に「DX」というなんとなく変革してるっぽい雰囲気を出したい大手企業が好みそうなワードが出てきたわけですが、こういったワードに踊らされている会社の中で変革が化学変化のように起きているとは思えません。イノベーションってワードが社名に入ってるような会社ではイノベーション起こせないのと同じですね。
こう考えてみるとベンチャー企業のフットワークというのは素晴らしいなと思います。鎌倉や館山に広い一軒家オフィス構えて共同生活しながら働く、みたいなスタイルのスタートアップがスタンダードになってくるかもしれませんね。
それでは。
Kosuke
〜あとがき〜
9月になっていきなり涼しくなって来ましたが、電車に乗らなくなって半年経ちました。最近東京での飲み会のお誘いとかもちらほらいただくのですが、完全に千葉から出ずに半年過ごしてしまうと「いざ!」と東京に行くタイミングを完全に見失っています。。。これはどうするとよいのでしょうかね?ご意見いただけると嬉しいです!TwitterのDMなどでアドバイス下さい!w