SaaSのオプションによるアップセルについて考察

SaaSのオプションによるアップセルについて考察

INST石野です。

9月は諸事情ありまして、ブログ更新控えていたのですが、流石に9/2の1記事のみはまずいだろうということで今日は書いていきたいと思います。

タイトルにもありますように、実体験をもとにして「SaaSのオプションによるアップセル」について考察していきたいと思います。

顧客数を増やすのか、客単価を上げるのか

売上を伸ばすための方法はシンプルに2つで、顧客数を増やすのか、客単価を上げるのかのどちらかです。

とはいえ、この2つは共存できないわけではないというか、一緒に追うことができる二兎ですので多くの会社が両方についての施策を講じていることと思います。

顧客数を増やすためにやることは新規開拓を行うこと、ただ一つしかありません。

方や客単価をアップさせる方法というのは何があるのか考えてみますと

・値上げ

・アップセル(既存顧客への追加営業)

の2つです。

これは個人的な意見ではありますが、SaaSが値上げをする、というのはあまり提供元の経営状況が良くないと思って間違いないかなと思っています。すぐに潰れるとかそういうことを言っているのではないので、少し説明します。

今回は10月1日から消費税改正があるので、そういった値上げなら問題ないのですが、1アカウントあたりの利用料金が倍になります、とかそういうやつが来るということは経営が苦しかったり、なかなか上がらない客単価に対して株主に文句を言われて、「利用料金を倍にしても解約が半分以上でなければ売上UPするやん」と目論んでいたりするわけです。

SaaS提供において、プライシングというのはすごく重要なものなので、理由もなく値引き前の価格に設定しているわけではありませんから。SaaSは顧客数が増えていけば増えていくほど、利益率が上がりやすいビジネスモデルです。突然の値上げがあった場合は損益分岐点を超える前に資金繰りやキャッシュフローがしんどくなって値上げせざるを得なくなったと考えるのが自然です。

オプション追加によるアップセルはなかなか難しい

では残るもう一つの客単価UPの方法「アップセル」についてです。

先に結論を言ってしまいますが、SaaSにおけるオプション追加によるアップセルはなかなか難しい、というのが僕の今の段階での意見です。もちろん様々な背景や要員、事情が混在しますのでそれを解説します。

SaaSというものは常に進化していくべき、永遠のベーター版というのが僕の考えでして、主力商材であるINST Messengerも4年半で変化、進化を遂げてきました。

Phase1:SMS配信のみ

Phase2:返信フォームによる双方向性の担保

Phase3:ClickCallBackによる電話サービスとの融合

ざっくり書くとこんな感じでBtoC向けのコミュニケーションサービスとして進化させていっているつもりです。

創業時に今のような状況の機能・オプションラインナップになっているということはあまり想像をしていたわけではなく、サービス提供をする過程で気付いたことやお客様からの要望をもとに機能追加をし、有料オプションとして提供するべきか、標準機能としてすべてのお客様に無料で使っていただくのが好ましいのかを考えながら機能開発・値付けをしています。

例えば、返信フォームというのはINST Messengerの管理画面内にてスマートフォンに最適化されたアンケートフォームを自由に生成して送付し、回答を管理画面で受け取れるというオプションで10,000円/月で提供している有料のオプション機能です。

INST MessengerのSMSは双方向SMSではなく、直接の返信を受け取ることができない仕様にしてありまして、SMSを送った相手からの返事を受け取り、双方向でのコミュニケーションを成立させるために開発しました。

もともとSMS送信機能しかなかったPhase1ではSMS配信にGoogleフォームなどを組み合わせての利用を推奨していたのですが、セキュリティの問題でGoogleフォームが使えない、管理画面内でなんとか完結させたいというご要望がありまして、開発・提供をすることにしました。

今現在でもたくさんの会社でご利用を頂いている人気のオプションです。事例はこちらなどをご覧ください。

ですが、Phase1で利用開始頂いたお客様とPhase2以降で利用開始頂いたお客様とでは利用率が大きく異なるのです。これがオプションによるアップセル、既存顧客の客単価UPをオプションで行うのはなかなか難しいと判断した理由です。

厳密にPhase1/2の顧客を分けて調べているわけではないのですが、Phase1からのお客様のオプション利用開始率は1-2割、Phase2以降でのオプション利用開始率は4-5割、という感じだと思います。

これは返信フォームに限らず、Phase3で提供開始をしたClickCallBackにも同じことが言えます。

なぜオプションによる既存顧客へのアップセルが難しいのか

まず前提として、オプションを使わないとサービス利用する旨味がまったくなくなってしまうような製品設計にはしていません。

基本の15円/通だけのSMS配信機能だけでほぼ創業時から4年以上INST Messengerを継続利用いただいているお客様もいらっしゃいます。

オプションがないと使う意味ない、というようなことですと実質の値上げになってしまいますしね。自分で危ないって言っておきながらw

なぜオプションの提供開始前に契約したお客様の新規でのオプション利用率が、提供開始以後のそれより低いのかを考察してみました。

1.既存顧客への案内が甘い

これは当社の体制の問題です。少人数でサービス提供をしているということ、顧客単価があまり高くないこともあり、サービス利用中のお客様へのこまめなコンタクトというのはあまりしていません

もしチャットでの質問を送っていただかないとすると、毎月送る請求のメール以外はコミュニケーションは基本0です。

つまりは「オプションできたよ!使ってね!」という案内が甘い可能性があるのかなと。

もしかすると他のSaaS事業者の中には、新しいオプション機能をリリースしたらアクティブな既存顧客に電話連絡して提案のアポ取って1件1件こまめに営業するみたいな会社もあるのかもしれませんが、あまりゴリゴリ営業するのも好きではないですし、そのお客様それぞれの使い方があるだろうなと。

以前は月間の利用通数が極端に減ってしまったりなくなってしまったりしたお客様へのフォロー活動を行っていたのですが、原則として従量課金のサービスということもあり、通常の月額料金制のSaaS提供事業者に比べて利用開始以後のフォローはそんなに注力しなくてよいという判断になりました。

こういう話をすると「なんだ、INSTは申し込んだら放置なのか!」と思われてしまうので弁明させていただきます。

もちろん申し込んだら放置、というわけではなく無料での操作オリエンも必ず実施していますし、どうやって送っていくべきか、どのように業務に定着させていくかというドキュメントの提供などは行っています。それでも利用しない、という判断をしたお客様に対しては、押し付けがましく「使え!使え!もっと使え!」とゴリ押ししなくてもいいのかなと。使ったら払う、使わなかったら払わない、という従量課金ですので。

実際のところですが、年間の継続率は80%(SaaS業界的にいいますとMonthly Churnが2%、Annual Churnが20%)程度なのでそんなに定着率が悪くないとは思っていますが、アップセルを行うという観点でいくとまだ不十分なのかも知れません。

2.導入時点で「見える未来」が決まる

あるお客様とClickCallBackの商談をしたときの話です。そのお客様はPhase1でINST Messengerを導入頂いたお客様で、月間の利用料もTOP10-20の中に常に入るようなヘビーユーザー様で、こんな会話がありました。

客「石野さん、このClickCallBackってすごいよく考えられてるね。申し込み殺到してるんじゃない?」

僕「ありがたいことにリリース後に新規でお問合せ頂いた企業様には非常に好評で契約率も高いのですが、既存のお客様からの申込みというのがあまり多くなくてですねw」

客「なるほどね、INST Messengerの導入時点で業務プロセスを変えてある程度効果が出ているから、改めてそれを追加料金使って更に改善したい!というモチベーションにまで高まっていないのかもしれないね」

これは「なるほど、たしかにそうかも知れない」と思いました。

前述したように従量課金型のサービスで年間継続率が80%というのは、手前味噌なのですが、INST Messengerの導入である程度成果が出ているということなのかなと。もしかするとそこで満足頂いてしまっていて、オプションの必要性というのをあまり感じていただけていないのかもしれないと。

イメージ的にはオプション購入は新車購入時が一番多い、というような感じでしょうか。追加でカスタマイズしていくより、今の状態で満足だから特にオプションパーツ買わなくても、的な。だからマクドナルドは単品じゃなくて最初からセット推しなのかな。

新規でのサービス導入をするということは、そこで検討の熱量が最大になっていることは間違いなく、お客様の課題認識や問題解決への意欲もそこが一番高まっているわけです。

また、導入後、業務に定着させて成果を出すためには、業務設計をし直して、実際に利用する人たちに使い方の説明をして、効果測定をしてという結構重めのタスクが担当者の方に降り掛かってしまうわけで。それで定着してある程度成果もでて運用にも乗ってホッと一安心しているところに「新オプションができました!」と案内されても相当の熱量を持っていただかない限りは導入にこぎつけるのは難しいのかもしれません。

では、どうすればアップセルできるのか

ということを考えてみると、アップセルをするためにはゴリゴリ既存営業をする、もしくはサービスリリース時点で考えうるフルラインナップのオプションを開発しきってから提供し始める、ということしかないのでしょうか。

まあ前者はできなくはないかもしれませんが、後者は超潤沢に資金がない限りはなかなか難しいですし、提供後の進化という観点ではそれはそれで課題があるかなと。

ではどうすれば既存顧客へのアップセルができるのかを考えてみたいと思います。

1.見せ方を変える

ひとつは別サービスっぽく売る、ということです。

実はこれはClickCallBackで実験をしていまして、ClickCallBackINST Messengerのオプション機能なのですが、◯◯機能オプション、という呼び方ではなく、ロゴも作って新サービスっぽくマーケしたりしています。切り口を変えて新サービスっぽく見せることで既存顧客の人に刺さらないかなと。

現時点ではこれ単体で問合せをしてきてくださるお客様が多いのであまりこのマーケの方法は大成功!というわけではないかもしれませんが、既存のお客様からも問合せがあることは間違いないですし、これは今後継続してやっていこうと思います。

ただ、難点があって、説明が難しくなる、ということです(笑)。ClickCallBackってなんなの?INST Messengerを申し込まないと使えないってどういうこと?という話になったりすることもあります。ご迷惑をおかけします。

2.別サービスを売る

既存顧客リストを再度リードのリストとして活用して、類似するような課題を解決する全くの別サービスを開発して売り出す、というのがこれです。

現在こちらは色々と検討をしているところでありまして、新たな顧客層を開拓するということと、更に手離れが良いサービスというのを目指して鋭意エンジニアチームと話し合っているところです。

実はこれはINSTの開発方針としてやりやすい方法でもあります。INSTのサービスはほとんどがAPIベースで開発されており、様々なシステムと連携がしやすくなっています。ので、そのAPIを別の管理画面を作って叩きに行くようなことを行えば、全く別のサービスが作れたりするわけです。SMSを使った安否確認システムなどは超具体的に検討していますので、ぜひよろしくお願いします。

3.既存顧客との接点をもっとちゃんと持つ

これは反省していることでもあるのですが、千葉に移転したことで訪問が極端に減り、3−4年会ってもいないし、会話もしていない、メールのやりとりもない(請求書のメールはサポートのメンバーが行っていたりするので。。。)というお客様が殆どになってしまいました。

先日、担当が変わられたという超初期のお客様と現状の課題や業務の改善、新しいサービスについての相談をオンラインで行わせて頂いたところ、とても喜んでいただきました。こういった機会を(釣りに行くばかりではなく)しっかり設けていくことが必要だなと。

出不精になってしまったのでハードですが、例えば10-12月を訪問強化月間とかにして毎日3社既存顧客を回る、とかいうノルマを課したら面白い結果が出るかもしれません。ちょっとなかなか踏ん切りがつかないですが。。。

こちらは日頃ユーザー企業のサポートをしてもらっているユーザーサポートのメンバーとも話し合って色々施策をねっていきたいなと思います。人材系のお客様が多いINSTのユーザーサポート、現在3名いるのですが実は全員元リクか元インテなのです。しかも今稼働している2名(1名は育休中)は人材紹介の経験者。こういった強みも活かしていければなと思います。

〜あとがき〜

超久々のブログで結構長く書いてしまいました!やっぱブログは書いていかないとだめですね。どんどん筆不精になっていきます。毎営業日書いていた数年前の自分めっちゃ偉いと思いました。。。

もうあっという間に10月になろうとしていますね。いつの間にか朝晩は涼しくなり、クーラーを使わずとも寝れるようになりました。2019年になったばかりと思っていたのですが、もう残り3ヶ月。

秋からは美味しい魚がまたもや沢山釣れる時期なので頑張って仕事をして、こっそり休んで釣りに行って、美味しい魚を食べたいと思います!11月に人間ドックもあるので少しお酒を控えている石野でした。

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