なぜ使いづらいシステムはなくならないのか?
INST石野です。
昨日が2020年東京オリンピックの観戦チケットの購入申込締切ということで例のサイトを使った人も多かったのではないかと思います。
そうです。サイト訪問時点で並んで待たないと入れないという斬新なチケット購入サイトです。
この時点で購入を断念した人も多いと思いますが、個人の感想としてはサイトの中に入ってからもまあ使いづらいことこの上ありませんでしたし。とても親切にユーザーのことを考えられたサイトという印象は1ミクロンも感じませんでしたよね。
・30枚以上買えない→カートに追加しようとした時点でアラート出せないの?
・抽選で当たった分は全部購入しないとダメ(当たった中から選べない)→知らない人多くない?
とか。まあ日程や組み合わせの都合でまだどこが日本代表が出てくる日程なのかとか全くわからない今の時点で発売開始しないと間に合わないのかとかいろいろ思うところはあるのですが。。。
今日はこのオリンピックチケット販売サイトのような使いづらいシステムがどうして無くならないのかを考えてみたいと思います。
仮説1:予算がない
皆さんご存知の通り、国や政府などの公共機関が何かしらの業務を発注したり物品を購入する場合は原則的に「入札」という手法が取られます。簡単に説明すると「こういうものが欲しいよ」という要件や仕様が開示されて、それに対して要件・仕様に合うものを提供できる民間業者がそれに対して「いくらで提供できます」と表明するのが入札です。
そして、原則的にその中から一番安いものを購入する。これで国民の税金を使う公平性を担保するというわけです。
ということで公共関連の発注というのは予算が安いということもあり「最低限仕様が満たされてればいいよね」的に作られたりするわけで、UI/UXに関して知見があるデザイナーをアサイン出来ずにコーディング担当のデザイン知識がないエンジニアがUIデザインしていたりするわけで、使いづらいという印象を与えることが多かったりします。
eTAXとか自治体のWebサイトとかオンライン申請システムとかってだいたいこんな感じで低予算で発注せざるを得ないので使いづらかったりすることが多いように思います。
ちなみにですが、オリンピック関連のサイトはアクセンチュアが1.5億円で落札したようですが、おそらく2次3次、もしかしたら10次請けの会社が2-3000万でゴリゴリ作らされたのではないかと個人的には考察しています。5000万円あればもっと良いサイト作れたのに・・・というシステム開発会社さんも多いとは思うのですが、IT業界が建築業界同様、下請け下請けの階層構造になってしまっている以上どうしようもありません。
仮説2:セキュリティ優先
銀行などのシステムがクソなのはこれに該当することが多いように思います。
セキュリティを担保するためにユーザビリティを犠牲にせざるを得ない、という状況ですね。まあ確かに致し方ないのかもしれませんが、セキュリティとユーザビリティを高いレベルで両立させるには予算がない、という仮説1に辿り着いてしまうのかなあとかも考えられます。
オリンピックチケットの販売サイトで「電話番号認証ってめんどくせえwww」という方も多かったと思いますが、あれも電話番号をキーにしてユーザーの一意性を担保するためであって転売やいたずらを目的とした不正購入をある程度防ぐための仕組みと考えればそんなに不自然ではないかなと。
たくさんのユーザーが利用する以上、ある一定のセキュリティはもちろん担保されるべきとは思いますが、例えば個人間CtoCのメルカリさんなどはかなり絶妙なバランスでユーザビリティを優先した結果、あそこまで流行ったのではとも思います。
仮説3:たくさん使われたくない
今回に関してはこれが個人的には有力な意見です。
そもそもECサイトやインターネットメディア、ネット上のサービスの全てはたくさんのユーザーがたくさん利用をすることで収益が上がる仕組み、というのは今更説明しなくてもご理解いただけるのではないかと。
今回のオリンピックのチケットの販売サイトでは、オークション形式での購入ではないかつ席数にも限りがあるため、チケット販売で得ることができる収益の上限は決まっています。ということは何人が購入手続きをしようが儲けは一緒、ということです。たくさんの人が抽選に申し込むためにサイトに訪問してしまってはサイトの負荷が増えてしまいますし、抽選の手間もかかるし、当選する人数が爆発的に増えてしまうので「待ち行列を我慢して待てる人だけに売ればいい」とか「購入までのUIを超回りくどくして脱落しなかった人だけ買ってくれればいい」という思惑が働いていたのではないかとも推察できてしまいます。
この仮説には余談がありまして、某友人が所属している会社では経費精算のためのシステムのUIがかなりイケてなく経費申請をするのがめちゃくちゃ面倒くさいらしいのです。その友人はもう経費申請をするのを諦めたようで自腹を切っています。もしその会社の思惑が「経費システムが使いやすくて気軽に申請されたらたまらん、面倒くさいUIにしよう」というものなのであれば、悲しいことなのですがその会社の思惑通り、ということになりますね。
仮説4:発注者がボンクラ
これも有力な仮説です。システムを発注する側の人がITに関しての基礎知識がなく「エンジニアは魔法使いで何でも作れるはず」「人間が想像しうることはすべてシステム化可能って聞いたことがある」「こんな修正点チョチョチョっと直しておいてよ(無料で)」みたいな状態が日本各地で散見されます。
ある一定以上のシステムや業務に関する知識がない人が仕様を決めて開発会社に発注してしまっているので「言われたことを実現するには使いづらくするしかない」的なことが多くなり、結果としてクソみたいなシステムが出来上がってしまうと。
発注者側にユーザー視点がないということも大いにあるかと思います。
これまじでいい画像だと思う pic.twitter.com/gkeCNqEk7j
— とろにく (@anthracite56) May 23, 2019
こんなtweetが数日前話題になっていましたが、ホントこの画像が風刺している状況はどこでも起きていますからね。
開発を請け負った会社は発注者のことを向いて仕事をせざるを得ないわけで、その発注者にとってのお客さんはいつもないがしろにされます。
今回はアクセンチュアという日本、いや世界を代表するようなコンサルティング会社が親請けで監修をしているわけなのですが、当然金が出ているもとは政府やJOCだったりするお役人の方々だったりするわけですし、前述したように入札制度で落札した以上は「この金額でこのシステムを要望通りに納品します」ということになるため、「こうしたらもっと使いやすいのに」とか提案して通ったりしたらは開発会社にとっては自分の首を絞めかねないことになってしまうのでやむなく「黙っていわれたことだけやってりゃいいか」となったりしてしまうのですね。
ウチのエンジニアに聞いてみた
せっかくなので当社のエンジニア3人にも聞いてみました。なぜ使いづらいシステムは無くならないのか?
エンジニアA:「それで儲かっちゃうからじゃないですか?この発注者馬鹿だなと思いつつも工数増やすのも提案するのも面倒くさいから言われたとおりに作る。結果それが実際に使う人の事を全く考えないシステムになっても発注者の満足度が高いのが重要になってしまいますからね。」
エンジニアB:「完璧な法律が作れないのと同じですね。解釈の方法も様々だし、絶対に公平なものなど作れないのと同じで全員が納得するようなシステムって作るのがすごい難しいんですよね。」
エンジニアC:「電通が悪いんです。いや、電通みたいなやつらが。なに仕事してんのかわかんないのに高い金ふんだくる奴らが一番キライです。」
ということでした。三者三様ですね。それにしてもエンジニアCは電通に個人的に恨みでもあるのでしょうか、、、、
どうすれば使いづらいシステムはなくなるのか?
では一体どうすればいいのでしょうか。根本的に解決をするためには日本のSIerが全部なくなるしかないと思います。ソフトウェアはすべてパッケージ化されたものを使うような法案が設立されて、個別カスタムも一切禁止。業務上使いづらかったとしてもその会社がシステムに業務を合わせる。もしパッケージソフトが嫌なのであれば完全自社開発で外注禁止みたいなことになればこういった使いづらいシステムとかはなくなるじゃないかなと。
AmazonとかYahooショッピングとかメルカリとかがプラットフォームになってオリンピックチケットが購入できたらどんなに使いやすかっただろうな、と思いながら全部当選したら100万円近いチケットどうするか悩んでいる私の戯言はこのへんで修了します。
それでは。
Kosuke
[雑記]
ブログを書いている今日(5/28)は月に1度の千葉DAYといってINSTのエンジニアが全員千葉オフィスに集合する日でしたので開発者の視点でもこの記事が書けてよかったのと「石野さんはフワッとした感じで開発要件伝えてきますけど、システムのことをある程度理解してくれてるんでやりやすいっす」と言ってもらえてちょっと嬉しかったです!
とはいえINSTのサービスが比較的使いやすいと言ってもらえるのはエンジニアたちのお陰だなと。今日も千葉DAY恒例の夜の飲み会行ってきます!
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