外国人労働者は「必要悪」なのか?─労働力不足の現実と制度の歪み
INST石野です。
先日、人材業界の有名人、人材ビジネス経営研究所の山内さんが主催されている高付加価値型アウトソーシング研究会の勉強会にお邪魔させていただき、これまた人材業界では知らない人はいないであろう、エンゼルバンクのモデルにもなった海老嗣生さんの講演を伺う機会をいただきました。(山内さん、海老原さんありがとうございました!)
その講演の内容が非常にタメになるものだったので、自分の為の備忘録としてまとめておくことにしまして、せっかくなのでブログに書き留めておくことにしました。
「外国人労働者の受け入れを拡大すべきか否か」
このテーマは人材業界でもしばしば議論になります。肯定派は「人手不足の救世主」と語り、否定派は「治安悪化や社会コスト増加」を懸念します。
ただ、実際の数字を見ると、どうやら今後の日本においては「外国人労働者なしには経済が回らない」ことは一目瞭然という内容で、僕もハラオチしました。
非正規雇用の拡大と外国人流入の構造
厚労省の統計によると、現在日本の労働者の約4割が非正規雇用。その数は 2,200万人超 にのぼります。
その中で派遣社員は約150万人、そのうち 4分の1以上(40万人前後)が外国人 です。
つまり「派遣労働者の現場を支える4人に1人は外国人」という状況になっているとのこと。
確かに飲食や小売の店舗に行けば、ドン・キホーテやスシローで外国人スタッフを見かけるのは珍しくないですし、そういった肌感覚だけではなく、統計的にもすでに外国人は労働市場の主力の一部になっています。
技能実習制度の限界と「特定技能」へのシフト
従来の技能実習制度では「3年で帰国」が原則でした。そのため教育投資をしても戦力化した頃に帰ってしまう。これが現場にとって最大の不満でした。
そこで2019年から導入された「特定技能」制度。一定の日本語力と技能を証明できれば在留延長が可能となり、最大5年の就労が認められます。
ただし注意すべきは「受け入れ人数の急増」。政府は特定技能で 5年間で最大34万人受け入れ を想定しています。既に愛知の自動車工場では従業員の 8割がベトナム人 という例もあり、マネジメントや現場文化が「日本型」から乖離しつつあります。
外国人犯罪の実像と誤解
アンチ外国人労働者が声を大にして主張するのは「外国人労働者が増えたら犯罪が増える・治安が悪くなる」ということです。
確かに、メディアでは「外国人犯罪が8倍増えた」といった刺激的な数字が出ることがありますが、実際には母数の見方やデータに問題があります。それは、母集団に観光客や短期滞在者を含めているためで、常住人口比で見れば日本人と大差はありません。
外国人の中にいる「不法滞在者」にフォーカスをすると、確かに日本人の犯罪率に比べて格段に高いようですが、その不法滞在者も政府の政策や法改正などによって、平成5年には30万人ほどもいたのに、令和6年には7万人ほどまでに減少しています。
グラフは出入国在留管理庁の資料より
外国人の犯罪率は
常住者<短期滞在(観光客含む)<<<<<<<不法滞在者
という感じで、上記含めた外国人トータルと日本人トータルを比較して大体イーブンになるので、外国人の常住者の犯罪率は日本人よりも低い、というわけですね。日本に常住している人は、何らかの理由があって祖国ではなく日本に居続ける意思決定をしているわけで、真面目に働いているということです。
問題なのは「一部の不法滞在者や難民申請の乱用」であり、全体を一括りに否定するのは誤りなわけですね。
経営者視点から見た課題と提言
経営者・人材業界関係者が押さえるべきは、次の4点です。
-
労働需給の見通し
日本の生産年齢人口はピークの1995年から比べて 約1,800万人減少。今後も毎年 約50万人規模で減少 が続くと予測されています。外国人労働力なしには人材確保が不可能です。 -
循環モデルの構築
技能実習 → 特定技能 → 永住/帰国支援、といった「循環の仕組み」を制度化しなければ、受け入れも帰国も中途半端になります。 -
財源の活用
外国人労働者が支払い、受け取らずに帰国している年金は 年間約9,000億円。このうち約半分の 4,500億円 は積立金として残っています。これを帰国後の起業支援や現地教育に投じれば、日本とのネットワーク強化に直結します(海老原さんの意見)。 -
社会的コストの可視化
教育、医療、治安維持に伴うコストを無視すれば「安い労働力」の幻想に陥ります。数字でコストを可視化し、国民的合意を形成することが必要です。
まとめ:中道的な解こそ現実的
外国人労働者は「必要悪」ではなく、既に200万人超が就労している不可欠な存在 です。
ただし、無制限に受け入れれば地域社会や企業現場に混乱を招くことも明らかです。
経営者・人材業界が取るべき立場は、
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不法滞在や制度悪用の徹底排除
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日本語教育や地域参加による共生促進
-
帰国後の支援を含む循環型モデル設計
これらを冷静に数字で裏付け、経営の一部として位置付けることです。
人材不足が構造的に続く日本において、外国人労働者との向き合い方は、経営者の「戦略眼」が試される領域 だといえるでしょう。
↑ここまではほとんど海老原さんの講演の内容をメモったサマリです。
※数字など間違った表現が入ってしまっていたらそれは僕のメモミスだと思います
INST石野の個人的見解
日常生活レベルだと外国人アルバイトは不可欠
僕の住んでいるマンションの目の前にあるセブンイレブンは、朝の時間帯にいるおばちゃんたちを除いて、ほとんどの時間が外国人の方がレジを担当してくれています。
家の近所に日本語学校があったりすることも影響しているかもしれませんが、コンビニだけでなく、居酒屋のホールやキッチン、よく行く近所のスシローのバックヤードなど、外国人アルバイトの人に接しない日は殆ど無いような気がしています。
最近?かどうかはわかりませんが、工事現場や建設現場の作業員にも東南アジア系の若い男性がとても増えたように思います。昔はあんまりいなかった気がしますけどね。
過去最高の正規雇用→非正規不足→非正規レベルの低下&外国人が1/4
人材ビジネス経営研究所の山内さんからのお話にもありましたが、少子化による人口減・労働人口の減少が起きている中、正社員(正規雇用)として働いている人の人数は過去最高になっているようです。
労働人口は減っているのにどうしてそういうことが実現できるのか?というのは、今まで非正規で働いていた人が正規雇用にシフトしていると。じゃあ非正規雇用の人達はどうなるの?というので、今は1/4が外国人になっていたり、非正規で働く人達のいわゆる「レベル」がめちゃくちゃ低下しているようです。今まで派遣社員として働くのもちょっと。。。というレベルの方が非正規雇用の戦力になっているということですね。
※外国人が低レベル、という意味ではありませんので誤解のないように
結局、あと数十年レベルでは少子化の影響は止められないと思いますし、それまでどうするの?というところで外国人労働者をどんどん受け入れていくしかない、というのは当然の話だと思います。
別にアメリカやシンガポールだって多民族国家なので、日本だって多民族国家になっても問題ないと、僕個人としては思っています。滅びるよりはマシでしょう。
外国人正社員の受け入れも待ったなし(だろう)
僕自信が直接の雇用現場から離れて久しいので、あくまで感覚なのですが、人材紹介ビジネスの視点で考えますと、外国人を正社員で雇用したいという会社はこの10数年の間、まだそんなに増えていない印象ですが、特に人材が枯渇しているITエンジニア領域においては、外国人エンジニアを受け入れる会社は増えてきたのではないかと思います。
語学や風習の違いなどが障壁になることは事実だと思いますが、それこそ翻訳なんてAIがちゃちゃっとやってくれる時代になってきているわけなので、今でこそITエンジニア領域や非正規雇用に限られる外国人労働者の人材紹介というのも、今後立ち上がっていく可能性は十分にあるのではないかと思います。
国が永久に不滅とは限らない、という視点
話が脱線しますが、自分でPodcastをやるきっかけのひとつになった大好きな人気Podcast「コテンラジオ」はすべてのエピソードを聞いているのですが、世界の歴史を耳で学んでいて、大きな気づきとして思ったのが
「国は滅びる」
ということはありうるということです。そして、その国の中にいる人は決して自分の国が滅びるとは思っていないことも。
なので、今僕たちが過ごしている日本が滅びるとはほとんどの人が思っていないでしょうし、滅びて欲しいとは誰も思っていないはずです。でも、ローマ帝国やキングダムでも知られる中国の秦、直近では滅びたわけではないですがソビエト連邦が解体してロシアといくつかの国々に分裂してます。
平和な世の中になっているので、日本が外国人の侵略によって滅びて日本人が全滅するということは考えづらいですが、日本国が解体して、千葉県だけ独立国家になるとかそういうことになる可能性も0ではないのではないか、と考えるようになりました。
これは会社運営も一緒で、特殊な例外を除いては、会社を潰そうと思って会社経営をしている経営者はいないと思いますし、会社が潰れると思って入社する社員もいないわけです。が、潰れる会社も買われる会社も(戦略的売却ももちろんありますが)あるわけで、そういった自分が所属している組織が未来永劫、今の形をキープするとは限らない、という意見を持つことも、ひとつ自分の人生に新たな視点を加える考え方かな、と思いましてメモ書きの最後に書き留めておきます。
今日はこのへんで。それでは。
Kosuke
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