リクルートキャリアですら失敗する、人材ビジネスとオウンドメディアの相性の悪さについて
もーえろよもえろーよー♪と思いつつ書きます。火事と喧嘩は江戸の華、東京都千代田区にオフィスを構えるINST石野です。
リクエストエージェント、という広告代理店さんのブログにこんな記事がありFacebookで知人がシェアをしてました。ちょっと社名が香ばしい感じが。。。
リクルートキャリア運営の採用オウンドメディアcarrariaが早くも頓挫
ほうほう、と記事を読んでみると、人材紹介最大手のリクルートキャリアさんが運営をしている(していた?)オウンドメディアが頓挫したと。
ふむふむ、とURLをクリックしてみますと・・・
普通にサイト見れるやん、頓挫してないやん
と思ったのですが、
最新記事が昨年の8月なので、コレは間違いなく頓挫ですねw
私も自社メディア集客はしていくべき!という意見の持ち主ですが、それはどちらかと言うとポジティブにオウンドメディアを肯定しているわけではなく、二次媒体(他社集客)にばっかり頼っていてはダメだよ、という消去法で残った選択肢の一つがオウンドメディアだと思っています。
そして、この事例に見るように、
人材ビジネスとオウンドメディアは超相性が悪い
です。コレは間違いありません。今日はなぜ私がそう思うのか、というのを紹介してみたいと思います。
「採用」という仕事自体がスピード命のビジネスである
オウンドメディアで成果を出すには時間がかかります。短期的に成果が出るオウンドメディアなんてありません。時間がかかるのがオウンドメディアなのです。
片や、採用という仕事においては、何と言ってもスピードが命です。同じ人材には二度と巡り会えませんし、もたもたしてたらそのポジションが他の紹介会社からの推薦で決まってしまうかもしれない。
「早く採用しないと、周りのメンバーも業務負荷が酷くて辞めちゃうから早くして!」そんな急を要しているクライアントの案件に一秒でも早く推薦をしなくてはいけないのに、オウンドメディアでちんたら集客なんかしてられるかー!という考えになっても仕方ないような気もします。これは採用ビジネスの宿命ですね。
お金さえ払えば集客できる二次媒体が豊富
上とも関係しますが、人材ビジネスの人は、すぐに成果が出る(=お金になる)施策の方を好む傾向があります。一つはお金を払えばすぐに使える集客媒体が豊富であるのが問題です。
リクナビやDODAなど、お金を支払えば「仕事を探している人」という自社集客では極めて難しい見込み客を送客してくれる二次媒体がかなり豊富です。特に紹介ビジネスは初期投資にあまりコストはかからないので、立ち上げ後すぐにこういった媒体を利用して事業を立ち上げることが容易です。
また、その媒体が成果報酬モデルの課金方式のモノもあったりしますので願ったり叶ったりです。決まらなければお金払わなくていいわけですから。自社集客力をつけることが必要がなく、そもそもその集客力を身に付けよう、という気が起きなかったりするのです。
オウンドメディアで集められる人は売りづらい「転職潜在層」
リクエストエージェントさんのサイトにも書いてありました(というかこの媒体の元?責任者?)が、
1.転職活動をしていない方々(転職潜在層)へのリーチ
2.自社に興味のない方々(非ファン層)のファン化
を集めるためにこのオウンドメディア「carraria」を立ち上げたと。
このゾーンを集めたい!という会社は多いですね。「いかにそのゾーンを囲い込むかが課題だ」という声もよく聞きます。ですが、声を大にして言いますと
こういう人達は売れないんですよ
転職意欲が低いので進捗の途中で転職しませーんとかになりますし、非ファンにファンになってもらうのなんて、そんなに簡単なことなの?と。クラシック音楽が好きな人にヘビメタ好きになってもらうなんてめっちゃ難しいと思いません?
しかも人材紹介会社のサービスというのはどこもほぼ同じ仕組みなので、差別化できない紹介会社の集団の中から「私のことだけ好きになってよ!」とイケメンを独占しようと試みるようなものです。
で、売れないふわっとした転職意欲の人達だけ集まってきて「無料相談受けませんか?」ってコンバージョンさせて、
上司「そろそろどうだー」
担当「エントリー自体は増えました!」
上司「そうか、それでは成約は?」
担当「それはまだこの先です!中長期的な視点で・・・」
上司「じゃあ、カネかけて囲い込んだ転職意欲低いやつはどうやったら転職するようになるんだ?」
担当「・・・それは。。。」
この先が出てくる担当は少ないでしょう。キレイゴトを言えても、それをマネタイズできないとね。
転職系に寄せるとコンテンツは面白くなくなる
コンテンツが命のオウンドメディアですが、基本的に転職系に寄せるとコンテンツは面白くなくなります。
なぜか?
転職者が自分の人生を委ねる転職支援会社を選ぶときに「面白い」より「安心感」「実績」「誠実さ」を重視するから、そういった面白くないコンテンツを作るしかないのです。と思っている人が多い、というか。
carrariaの記事もさらーっと見ましたが普通の会社の普通の社員の普通のエピソードなんて面白くないし、誰も読みたくもないし、シェアしたくもなりません。せいぜい運用元の会社の社員と、その社員の友達がいいね!して、たまーにシェアするくらいのもんでしょう。
また、誰かの転職でこうだった、というエピソードとか、「転職お役立ち」系のコンテンツって、あまり実際の転職に役に立たないんですよね。特定の企業のあの面接官の面接のクセは・・・とかいうのがあれば役に立ちますけど、そういう情報ってメディア化しようとする勇気ある会社はないでしょう。「面接対策」として売りにしてる会社があるくらいですから。また、いわゆる転職ノウハウみたいなのって、どれも使い古されたものばかりで、今更オウンドメディアにされても「へー、そうなんだ」と感心もされない。
こういったつまらないコンテンツで非ファンをファンにしようなんて・・・まあ無理ですね。
転職系コンテンツはソーシャルメディアと相性が悪い
諸外国では常にいい仕事、いいポジションがあるのを探しているのはビジネスマンとして当たり前なのですが、終身雇用が良しとされ続けてきた日本では、転職活動中というのは極めてネガティブな情報です。
人材ビジネスの会社がポストした記事に「いいね!」やシェアをしようものなら「桐島、部活やめるってよ」みたいに「◯◯、会社やめるんだってよ」とか「◯◯、転職活動してるんだってよ」という噂が社内で立ってその人の立場が悪くなりかねません。
このソーシャルの時代にシェアしづらいコンテンツというのは致命的です。そうでない限りはWelqよろしく、転職系のキーワードでガンガンSEOやSEMやってる自分たちの牙城を崩すくらいの気持ちでゴミクズ記事を量産しない限りアクセスは伸びません。ですが、そんなことをしたら「◯◯って紹介会社が書いてた転職コンテンツのとおりに面接で受け答えしたら落ちた!」とかの悪評が立ちかねませんから、実質不可能。八方塞がりの転職系コンテンツ。
ではどうすればいいのか?
ここまでだと、「おい、石野、それじゃお前はただの批判家じゃないか」と言われかねませんので、僕だったらどうするか
面白くてシェアされる「転職には全然関係ない(ように見える)メディア」を作る
これに尽きると思います。
いつも見てるあのサイトが「実は人材ビジネス会社が運営していた」という感じが理想です。メディアは一定量の人が集まれば何らかの方法でマネタイズはできます。トラフィック集まってきたら自社の転職相談のフォームに誘導すりゃいいじゃないですか。
サイバーエージェントがネットテレビ局をやる時代です。藤田さんがAbemaTVにどれだけ突っ込んでいるか、ご存知ですよね。その昔もAmebaに突っ込んで黒字化まで持っていったのも既知の事実かと。
メディアを運営すると決めた瞬間に、集客のライバルは他の人材会社ではなく、メディアのプロたちになります。エグい方法でSEO効かせてくるDeNAみたいな会社や、悪徳コンテンツマーケティングをススメてくるSEO会社もわんさかあります。その人達と戦って本気で勝てるコンテンツを作らないと、オウンドメディアは成功しないでしょう。
「転職」とGoogle検索する人を、大手以外の紹介会社が集客するのは不可能です。なので、一定量いるかもしれないそれっぽい属性の人を集めて囲い込んで、醸成してコンバージョンさせる。そのためには面白いコンテンツと根気、屈強な運用体制とコストがかかります。
皆さんに見習って欲しいメディアがあります。
コンペアというフォーリープさん、という紹介会社が運営している(立ち上げたばかりの)メディアです。
社長の山際さんとはもう10年来仲良くさせていただいておりますが、かなり頭の切れる方です。リクナビNEXTのエージェントランキングにも入るくらいの実績も出されています。
このブログ記事をご覧になっていただいた方は、このメディアがなんで優れているのか、ご理解いただけることでしょう。
わからない人や、わかったけど「ここまでは無理だわw」という人は、おとなしく求人票のクオリティをUPさせて、獲得した求人情報を次々に掲載する求人サイトを作成したほうがいいです。
僕もこの取組にはとても期待しています。何と言っても、僕がIT/ネット業界に行きたい!というきっかけを作ってくれたのが山際さんですから。流石ですわ、山際さん。
ちなみにフォーリープではコンサルタント積極採用中だそうです!問合せはこちらから
あなたが「INSTのブログを見て」とフォーリープにエントリーすると、山際さんが中目黒で僕に焼肉おごってくれるかもしれない!
それでは。
Kosuke
※今日は皆さんに読んで頂きたい記事だったのでアイキャッチにsnapmartのえとみほさんお薦めの水着女子を設定しましたw