なぜ人材紹介会社のオウンドメディアは成功しないのか
INST石野です。今日はちょっと”狙った”タイトルです。
僕が営業に伺う先の90%くらいは人材ビジネスのお客様で、ほとんどが集客担当か経営者の方とのお打合せになります。INSTのサービスは「個人ユーザーとのコミュニケーションを解決するビジネスツール」なのですが、お打ち合わせの際にほとんど毎回出てくるのが「集客課題」です。要は転職希望者が思うように集まらないと。
多くのお客様の状況は以下のような感じです。
・転職希望者集客の過半数を他社メディアに頼っている
・自社メディアが大事なのは理解しているがあまり注力していない
・自社集客でROIが良いのはLP+リスティング&リタゲ広告
もちろんすべてが当てはまるわけではないですが、いくつか思い当たる節がある方もいらっしゃるでしょう。特に採用難の時代ですから、「人さえ来てくれれば決まる!」という紹介会社も多いのではないかと。
逆にですが「うちの会社は自社メディアだけで集客ガンガンできていて、リクナビnextとかDODAとか全然使ってないっす」という紹介会社には遭遇したことがありません。個人に近い形で紹介業を行っていらっしゃる会社様ですとそういう企業もあるかもしれないですが、INSTのクライアントになるのが大体5名以上くらいの人員でやっている会社様からになるからお会いしたことがないんだと思いますが。月間100名以上の集客が必要になってくると外部媒体に頼らざるをえない、という状況が出てくるんじゃないかなと思います。
実は「成功していない」わけではない、人材紹介会社のオウンドメディア
僕は断然このように考えています。成功していないわけではなく、「成功していない」と思ってしまっている、ということではないかと。どうしてそのように思い込んでしまうのかを考えてみました。
オウンドメディアで集客したい人がきちんと定義できているか?
集客したいゾーンはどこのゾーンなのか、きちんと定義できていますでしょうか?職種、年齢、この辺りは自身の会社の得意領域に寄せていくほうが効率がいいので、ITエンジニアに特化→Tech系のネタなど、コンテンツを偏らせるくらいはやっていると思います。
ですが、実はオウンドメディアで集客できるゾーンと紹介会社が集客したいゾーンで1番大きなギャップが生まれているのが「転職意向」です。すぐに転職する気がある人なのかそうでないのか、というところですね。
多くの会社で「自社メディアから集客できるゾーンは転職意向が『ふわっ』としている人が多く、すぐに成果(=転職成功=手数料売上)に結びつかない」という声を耳にします。で、その会社のオウンドメディアを見てみると最新の求人情報が書いてあるわけでもなく、コンサルタントの方のコラムやオフィス見学などの記事が中心だったりします。
転職顕在層(転職意向が高く、すぐに転職をしたい人)を確保したい、というのであれば、それ相応のコンテンツ設計と工夫が必要です。そして、かなり難易度は高いです。なぜなら「転職するなら◯◯」というキャッチフレーズで多くの人にはメジャーな求人媒体のブランドが刷り込まれているから。これらに勝って顕在層をガンガン集めるのはかなり骨が折れます。
ですから、短期的な集客のみにフォーカスするとリクナビNEXTやDODA、enのミドルの転職やイーキャリアFAなどを使ったほうが効率よく集客できるわけです。実は効率よく集客できる、のではなく、転職意向が高いので効率的に収益化できる転職希望者が集客できる意味なんですね。
CPAが高くなってもリスティング&リタゲ広告を活用する意味はある
意欲が高い転職希望者を自社集客する時に、リスティング&リタゲ広告の活用は外せないでしょう。すごく簡単に言うと「転職+◯◯(ターゲットにしたい人が入力しそうなキーワード)」でGoogleのキーワード検索広告を購入してLPに集客し、リタゲタグを踏ませてアドワーズやFacebookのリタゲで追いかけ回すという手法ですね。オウンドメディアなのか?と言われるとちょっとグレーなゾーンですが、自社集客、という定義で考えるのであれば十分オウンドではないかと。ちなみに僕は仕事柄お客様のHPをよく訪問しますが、リタゲで追い掛け回される経験はそんなにないです。多分300社くらいサイト訪問はしてると思うのですが4~5社くらいでしょうか。意外とブルーオーシャンなのかも。
職種にもよりますが、CPA(Cost Per Action※ここの議論でいくとAction=Webエントリー)が2~3万円くらいで抑えられるような職種があるのであれば、その後の面談後決定率が10%だとしても1決定当たりに必要な金額は20~30万円。成果報酬型の二次媒体(リクナビNEXTやDODAなど)ではフィーの15~20%くらいを成功報酬として支払うのが標準的だったと思うので、年収が500万円くらいまでの人の集客であればリスティングでの自社集客のほうがコストメリットが高いです。また、二次媒体からの求職者に比べて、自社だけにエントリーしてきてくれている率が高いので他社競合する確率も低いかもしれません。
逆に考えますと、CPAが低くても集客できる求職者のゾーンがあるのであれば、そこの求人開拓をすることで業績(利益率)を上げることは出来るのではないかと。自身の得意ゾーンではなく、集客単価が低いところを狙う。今は求人難で集客単価は高いけれども、求人開拓営業のハードルがあまり高くないのでお薦めではありますね。
他社と差別化したいならコンテンツと営業活動で「ひねらんかい」
人材紹介のサービスは極めて差別化が難しいです。ビジネスモデルがかなり秀逸に確立されておりますので、サービスがコモディティ化しやすく、大体の会社のホームページで
・他にはない非公開求人(=多分紹介会社1社でエクスクルーシブな求人なんて1%もない)
・業界専任で知識豊富なコンサルタント
・無料で気軽に転職相談
というような謳い文句で集客をしております。他に差別化する要素がないんですよね。他にあるとすると、美しい女性(フリー素材ではダメ。自社社員がベター)の写真を素材として使うとかでしょうか。他社と差別化したいのならコンテンツを「ひねらんかい」ということですね。
その昔、僕が入社する前ですが、インテリジェンスは「年収診断」というコンテンツを使って多くの求職者を獲得しました。経歴を入力すると「あなたの適正年収は◯◯円」と出てくるというキャンペーンです。獲得できたのは転職顕在層で、他の媒体でリーチが出来切ってないゾーンだったのでしょう。今の年収より適正年収が高く表示される仕組みになっていて転職射幸心をあおる内容になっていたのではと推測できますがね。
おそらくはその年収診断で獲得した個人情報にアプローチをして「転職相談受けに来ませんか?」と登録を推進する際には、通常のエントリー者よりは転職意向が低いと推測されるため、苦労はされたことでしょう。「単に年収診断したかっただけで転職する気なんてねーわwww」という人も含まれていたでしょうから。ですが、獲得できたゾーンはまさにブルーオーシャンの転職顕在層で、その顕在層への営業活動で有効な求職者を獲得できたわけですから、コンテンツと営業活動で「ひねらんかい」ということですね。
どんなようなコンテンツを作れば良いのかについても書こうかと思ったのですが、少し長くなってしまいましたので、続きはまた次回に書きたいと思います。
→自社メディアのコンテンツ相談も受け付けておりますので、ぜひブログ記事下のフォームからお気軽にお問合せ下さい。
それでは。
Kosuke